10月某日 中目黒

10月某日 中目黒

僕の尊敬する人と、中目黒で呑んだ。
軽くミーティングするつもりが、あれよと何時間か呑んでしまった。

お酒が進んだのは、きっと、
彼にもっと自分を知ってもらいたいからと、
もっと彼のことを知りたかったからだ。
だけど、いつも彼と話すのは怖い。
彼は、僕の中で強靭でタフな男だというイメージ。
そして、自分の経験を信念に変えれる類まれな人。
そういう人に僕は弱い。

まず、自分のことをベラベラと話した。
受け入れられると思ったのに、まさかの反論。
そして、問題指摘。
指摘されて言葉に詰まっていく僕の信念。
思っている事を上手に話そうとすればするほど、
悪あがきみたいになってしまう。
隣においてあるグラス赤ワインが、
生贄の血のように、不気味に思えてくる。
あせって飲み干すと、とたんに酔いが廻ってしまい、
さらに冷静なディスカッションが出来なくなる。

(ちがう。僕はそんなんじゃない。)
何回も心の中で、自分をもっとよく見てもらいたいと
思いながら話をした。
確かに彼は僕を誤解しているところがあるかもしれない。
僕の弱さは、アナライズする力が劣ってることでは多分ないし、
どんな場面でも、啓蒙的な考え方に反抗しているほうだ。
思われているほどおぼっちゃんに
なりきれた過去を持っていないし、
思われているよりもうちょっと、
音楽家としてがんばっている。
いろいろな事に焦って
力が入っているというのは、大当たりだけど。
でも、話し合っているうちに、
何もかもがだんだん彼の言う通りに思えてきていたので、
後半はもうすでにノックアウトされていたんだろう。

帰り道、もっとショックを受けてドーンと落ちるかと思ったら、
意外と、ありがたい気持ちが8割(2割は落ち込み)を占めたのは、
大人になったからか。
いつからか、他人に否定される事があまりなくなってしまう。
でも、実は大人になってからの成長とは、
自分の信念を否定されても
それを受け入れられるようになることだ。

僕は、寝る前にいっぱいその人に感謝した。

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